「ホームレス・ワールドカップ」ってなに?その参加条件は……

ホームレスのこと

4年に1度のペースで開催されるサッカーの祭典といえばワールドカップ。コレはもう説明不要のブチアゲなイベントですね。毎回にわかファンが大量発生するほどの盛況ぶりです。

 

ただし、ここで紹介するワールドカップは知らない人も多いはず。その名も……

 

ホームレス・ワールドカップ

 

いやっ、これは僕がふざけて名前をつけたとかそういうんじゃなく、実際にあるんですよ。ホームレスだけが参加できるサッカーの世界大会。日本ではあまり知られていませんが、この大会は毎年開催されていて、日本代表の選手だっているんですよ。

 

「初めて聞いた!」

 

そんな人も多いと思いますので、ここで現役ホームレスの林田が詳しく紹介していきましょう。

ホームレス・ワールドカップとは

 2003年より毎年開催されているホームレス・ワールドカップ。

男性チームだけでなく、女子チームの試合もあります。参加資格としては、細かい条件がありますが、16歳以上であること大会開催前年にホームレス生活をしていたことが大前提です。また、今のところ日本で開催されたことはありません。

 

「えっ?ホームレスなのに海外に行けるの?」

 

そう思った人も多いはず。実は、ホームレス・ワールドカップの出場を目指す過程で、パスポート取得の支援にも注力してるんですよ。パスポートを取得すると、ホームレスになったことによって失った戸籍や住所を取り戻すことができますし、それが就職活動のきっかけになります。つまり、ホームレス生活から抜け出すために、この大会は大きく貢献してくれているわけです。

 

日本では、NPO法人ビッグイシュー基金が運営の中心となっていて、代表チームを野武士ジャパンと命名し、2004年のスウェーデン大会、2009年のミラノ大会、2011年のパリ大会に出場しています。

また、2012年には韓国の代表チームとソウルで日韓戦もおこないました。

現在、ボランティアのサッカーコーチのサポートを受けつつ、東京で月に2回の練習を続けています。

参加できるのは「一生で1度だけ」という決まりがある!

「パスポート取得の支援に注力している」という事実からも分かるようにホームレス・ワールドカップの大きな目的はホームレスの人たちの自立です。

世界に共通する貧困問題や人間の可能性を世界中の人々に考えてもらうこと。そして、生活に苦しんでいる人たちの生きがいを見つけること。そのために生まれたものです。

 自信をつけてホームレス生活から抜け出すことを目的としている大会になるため、参加資格は一生に1度としています。

参加者の年齢ってどれくらい?

サッカーをするホームレスの男性

 質問です。日本におけるホームレスの年齢って何歳くらいを想像しますか?

おそらく年配のイメージでしょう。そうなんです。野武士ジャパンの平均年齢は、2011年におこなわれたパリ大会のときで50歳くらいになります。

「まぁ、ホームレスだからそれくらいでしょう」って思うかもしれませんが、他チーム(ベトナムやカンボジアなど)の平均年齢は16~17歳です。大会の参加条件が16歳以上になるので最年少ですね。

また、大会に参加した70ヵ国の平均年齢で考えても22歳程度とのことです。

なぜ日本のホームレスは年配の人ばかり?

コレについては明確な理由があります。

結論としては各国でホームレスの定義が違うからなんですね。

世界的に一般的といわれているヨーロッパの定義では、知人や親族の家、福祉施設などで生活をしていて「自分名義で住む場所」を所有していない人もホームレスと呼ばれています。つまり、「潜在的なホームレス」も含まれています。日本でいうところのニートはもちろんホームレスに該当するわけです。

 

なので、ホームレス・ワールドカップに参加した途上国のチームには、レストランに住み込みで働く見習いコックなどもいたとか。つまり、ホームレスの定義が日本より広いことが平均年齢を下げている要因の1つといえます。

 

……とはいってもホームレスの定義を広くすること自体は個人的に悪いことじゃないと思っています。日本ではまだまだ路上生活をしている人のことのみをホームレスという傾向にありますが、安定した住居を持たない潜在層もホームレスの定義に含めることができれば、予防的な対策を取れるようになるでしょう。

 

だってね。日本にはニートやひきこもり、フリーターなどが300万人ほどいるんですよ。この人たちは若くしてホームレスになるリスクがある潜在的なホームレスになります。こりゃあほっとけないでしょ。まぁ、現に若年層の貧困や労働に関する問題は注目されつつあり、行政もNPOも路上生活者や困難を抱えた若者の支援に取り組み始めているのが現状になります。

 

僕だって最初は自分のことをホームレスだと思ってませんでしたよ。スマホは持ってるし、車もあるし、仕事もしてるのでネットカフェやカプセルホテルに泊まることだってできる。いわゆるTHEホームレスではないので、ホームレスとしての自覚はありませんでした。

 

しかし、ルーフレス(屋根なし)のみでなく、ハウスレス(家なし)もホームレスに含まれるということを知ってから、自分をホームレスと認めるようになりました。これって本当に大事なことだと今では思ってます。

 

ハウスレスの段階で危機感を持っていないと、すぐにルーフレスになり、そのまま転落人生を歩むことになってたと思うから。「まだ大丈夫」という慢心が命取りになりますので、早めにホームレスとしての自覚を持ち、対策を講じることができるのは大事なこと。

 

ちなみにホームレスの定義については……

 

 

↑こちらの記事で書いてるんでチェックしてください。

日本のスポンサー問題

日本ではホームレス問題に対する社会全体の取り組みが積極的ではありません。

 

例えば、韓国ではソウル市がホームレス・サッカーのチームを支援するようになっているし、CSRや雇用、人権の問題に取り組んだ企業には補助金や税制面での優遇処置が受けられるという条例ができたそうです。

 

さらに、「現代自動車」がスポンサーについたという事実もあるんだから驚きです。それと比べたら日本チームは「スポンサー企業です!」がない。それが現実。それが現状。そんな感じです。 

ホームレス・ワールドカップの公式ルールについて

さぁ、ちょっと堅苦しい話になっちゃいましたので話を戻します。ホームレス・ワールドカップにおけるサッカーのルールについてです。

ホームレス・ワールドカップはフェアプレーをとにかく重視していて、独自のルールが設けられています。

 

例えば、サッカーとはいっても1度にピッチに立てるのは、フィールドプレーヤー3人とゴールキーパー1人の合計4人だけ。試合時間は前半と後半7分ずつの合計14分になります。詳しいルールを以下に見ていきましょう。

コート・ゴールのサイズ

■コートのサイズ     22m×16m

■ゴールのサイズ     4m×1.3m

■ペナルティエリア    半径4mの半円

■外壁ボードの高さ    1.1m

■使用する球のサイズ   5号

チーム構成・時間・開始

■各チームはフィールドプレーヤーが3人

■ゴールキーパーは1人

■控え選手は4人まで

■試合は7分ハーフでハーフタイムは1分間

■審判がコートにボールを投げ入れたら開始

■得点後は失点したチームのゴールキーパーからのスタート

ゴールキーパー

■ 得点ができない

■ペナルティエリアを離れることはできない

■必要以上にボールを持ち続けることはできない(あくまで必要以上ね)

■味方選手から意図的なバックパスを手で拾うことはできない

ペナルティエリア

■フィールドプレーヤーはペナルティエリアに入ることはできない

■ディフェンスの選手が自陣のペナルティエリアに入った場合は相手チームにPKが与えられる

 

……とまぁ、こんな感じです。

この他にも「試合中は各チーム最低1人の選手が相手陣内にいなければファールになる」とか「イエローカードじゃなくてブルーカードがある」とか独自のルールがあります。あくまでミニサッカーになるので、サッカーよりはフットサルをイメージするといいでしょう。

 

あと、あんまり評価は高くないっぽいけど、ホームレス・ワールドカップのドキュメンタリー映画もあるみたいなので、実際に試合の雰囲気を見てみたい人はぜひ!


映画『ホームレス・ワールドカップ』予告編

日本が参加した過去の大会

2004年スウェーデン大会

ホームレスサッカーの全体

ヴァージン・アトランティック航空、ブルームバーグ、フッティ・ジャパン、プーマなどの企業や個人有志の寄付協力、そして多くの市民の応援を得て『ビッグイシュー日本版』販売者8名が、スウェーデン・イェーテボリで開催された第2回大会に参加しました。

チームの平均年齢52.5歳 は大会最高、ほぼ全員がサッカーよりも野球ともに育った選手たちにとっては不安を抱えてのスタートでした。

それでも、自分たちにできる最高のプレイを見て欲しいと最後まで走り続けた姿は大会参加者の心を動かし、毎試合、敵側応援席からも「ジャポン、ジャポン」のコールが沸くほどの人気チームとなりました。

日本チームは、「すべてのチームの中で最もフェアに闘った」と満場一致でフェアプレイ賞を受賞し、メダルと生涯の思い出を胸に帰国。

それから3年の間に8人の選手のうち7人が仕事をみつけ、ビッグイシュー販売から「卒業」されました。また、この日本チームの成功と健闘ぶりは、参加できなかった人たちにも夢と希望を与えました。 

 

2009年ミラノ大会

ホームレスサッカーのゴール

最終順位は48チーム中46位 選手の平均年齢41.6歳。

2004年大会より若返ったとはいっても、やはり日本チームは最年長。

野武士VSアルゼンチン4:6、野武士VSオーストラリア4:5と、奮戦したものの、1勝をあげることはできませんでした。

野武士ジャパンは、現地では大人気。他国の選手・サポーターからも「Nippon」「NOBUSHI」と応援コールを受けました。「最後まであきらめない」その姿勢は、大会本部からも評価され、ファイティングスピリッツ賞を受賞しました。

また、日本チーム最年少22歳の五味川さんが、フェアプレイ個人賞を受賞しています。現地の記者は、「大会の象徴」、「得点するたび、会場全体がわいた」と、その人気を伝えています。

参加したメンバーからは、「これまでの悩みや不安がちっぽけなものだと思えた」、「国境を越えて心を通わせることができた」、「仕事だけでなく、趣味を持つこ とができた」などの声がありました。

 

2011年パリ大会

ホームレスサッカー

2年ぶりに、ホームレス・ワールドカップに参加した野武士ジャパン。

「人生を変えたい」とパリに乗り込んだ選手たちが立てた目標は、「自力の1勝」と「あきらめない」の2つ。なかなか勝つことができず、選手間で意見がぶつかったり、試合後のミーティングで怒鳴り声が飛び交ったりするほど選手たちは必死で戦っていました。

しかし、目標の「自力の1勝」はあげられませんでした。

野武士ジャパンキャプテンのキーパー松田さんは、強烈なシュートを何度もはじき返し、「グッドスポーツマン賞」を受賞しました。

また、意見の衝突を乗り越え、励ましあいながら、最後まであきらめずに、勝利を目指す選手たちの勇姿に、大会本部から「勇敢賞」が贈られました。

試合中には、他国の選手、応援団などから「ニッポン!」の大声援が送られました。選手たちは「あきらめず、チームが1つになれたことを誇りに、胸を張って日本に帰りたい」、「いろんな人たちの力を借りて、ようやく人生のパスが回り出した。あきらめずにパスをつないで、人生の1勝を目指したいと思う」という感想でした。

 

以上が日本チームの参加した大会です。大会そのものは毎年開催されており、2019年はウェールズ、2018年はメキシコでおこなわれました。いやぁ、本当にいい大会ですよね。

日本大会の開催を心から期待!

いかがでしたでしょうか。ここまでホームレス・ワールドカップについて詳しく解説してきました。ところで最後に質問なんですが……

 

ホームレスワールドカップ(ホームレスサッカー)について知ってましたか?

 

おそらく首を横に振る人が多いと思います。

正直なところ、僕も自分がホームレスになるまでは知りませんでした。だって日本のメディアは一切報じていないから。ニュースはもちろんのこと、スポーツ番組でも話題にならない。サッカーの本質的な可能性を見出す取り組みは今の日本にはないんです。そりゃあ浸透するはずないですよね。

 

でも……

 

やっぱり現役ホームレスとしては世間にもっと知ってもらいたい。

人生をあきらめずに突き進んでいる野武士ジャパンというチームがあることを知ってほしい。

 1人ひとりの生き様を見てほしい。

ホームレス・ワールドカップには可能性があります。オリンピック、パラリンピックと同様に社会変革に大きく貢献するはず。 

 

そして願わくば日本でこの大会を開催してほしい。今のところアジアでの開催はありません。アジアで初めての開催国に選ばれれば、なんかイケてんじゃん!なんか嬉しいじゃん!なんか世間にも浸透しそうじゃん!

 

そして林田も出場して活躍したいっす!(๑❛_❛๑)

参考:ホームレス・ワールドカップとは – 野武士ジャパンーもうひとつのW杯、ホームレスW杯日本代表チーム

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